とあるどしゃ降りの雨の夜。
庭で何かが光ったのを、お母さんが見つけました。
それは近所では見た事の無い野良ネコの目が光ったものでした。お母さんが良く見ると、茂みに体半分は隠れていますが、黒猫のようでした。体はびしょびしょに濡れているようでした。
そして、とてもやせ細っており、もしかしてもう歩ける力が無い中で、お母さんの家の灯りに救いを求めてやってきたのかもしれません。
そう思ったお母さんは、冷蔵庫に走り、猫の好きそうな食べ物、そう、チーズとミルクを小皿に入れ、雨に濡れない庭先に置いてあげました。
「おいで、食べていいよ」
お母さんは、少しずつ後ずさりをしながら声をかけますが、びしょ濡れのやせ細った野良ネコは、小さい声で
「ニャー」
と、返事をするだけで、草むらからは出てきません。
お母さんは、そっとガラスドアのカーテンを閉めながら、とても悲しい気持ちになりました。
本当は、この土地は自然が豊かで、動物たちは恐れるものが殆ど無く暮らしていた。それが人間の開発によって森はなぎ倒され、自然は無くなり、道路が出来、現在は動物が簡単に命を奪われる場所ばかりです。
人間の開発によって住む場所を亡くしてしまった動物たち。そんな動物たちをできる限り助けてあげないといけない。お母さんは子供たちにそう教えました。
そして、そっとカーテンの隙間から野良猫の様子を見ると、小皿は空っぽになっていました。猫はと言うと・・・チーズとミルクが足りなかったのか、ドアの前でカーテン越しにこちらを見つめていました。
お母さんはこの猫がまだお腹を空かせていると思い、台所にまたチーズとミルクを取りに行きました。そして今度は野良猫に家の中で食べてもらいたいと思いました。家の中で温まって欲しい、そしてチャンスがあればびしょ濡れの体を拭いてあげたい。そう思っていました。
何日ぶりかにご飯を食べる事が出来た野良ネコは、今度はお母さんが呼ぶと恐る恐るですが、ドアの側まで入って来て、そこに置かれたチーズとミルクをまた美味しそうに食べています。
子供たちはお母さんに言われた通り、物陰からそっとその様子を見守っています。もしかしたら、家族が増えるかもしれないという希望を持ちながら。
そして野良猫はチーズとミルクのお代りを食べ終えました。お母さんはタオルを数枚そばに置きつつ、
「おいで、おいで」
と声をかけながら、野良猫との距離を縮めます。そして手が届きそうになるとお母さんはそっと手を差し出しました。
しかし、野良猫は驚いて外に逃げ出してしまいました。お母さんは残念そうな顔を子供たちに見せた後、庭先に目を向けました。
野良猫の姿は既になく、暗闇と雨の音だけが聞こえました。
**************************************************************************:
次の朝、雨もやみ、子供たちを送り出したお母さんは、ゴミを出しに行ったついでに、昨夜の野良猫がいないか近所を回ってみました。公園なら隠れているかもと思い、寄ってみましたがやはりどこにもいませんでした。
「まあお腹を空かせた猫だし、また夜に絶対に来てくれる。」
「あ、そうだ、今夜はお刺身を用意してあげちゃおうかな。」
お母さんも、新しい家族が増えるのを楽しみにしていたようです。
学校でも、子供たちが昨夜の出来事を自慢げに話していました。
友だちも猫に会いたくなってしまいました。子供たちは、今日ほど早く家に帰りたい日はありませんでした。もしかしたら家に昨夜の猫がいるかもしれないのですから。
お昼過ぎ、お母さんはいつもより楽しい買い物を終え、家に向かいました。買い物袋にはもちろん野良猫を歓迎するためのお刺身が入っていました。
そして、家に戻りましたが、何やら市のトラックが家の前に停車していました。お母さんは不振に思って作業服を着た年配の方に話しかけてみました。
「あっ、私どもは市の衛生局の者でして。実はお宅の前に動物の死がいあると近所の方が通報してくれたようでして、こうしてわれわれが処理をしに参りました。」
お母さんは奈落の底に叩き落とされたように不安になりましたが、まだあの猫と決まったわけではありません。そして、声を振り絞って聞いてみました。
「あの・・・・もしかして黒い猫ちゃんですか・・・?」
「え?あはい、そうです。もしかして・・・お宅の・・・?」
「あ、いえ・・・野良猫だったんですけど、あの・・昨夜・・・」
お母さんは勇気を出しました。
「あの、見せて頂いても・・?」
「それは大丈夫ですけど・・」「お願いします・・」
そして、作業員がダンボールを開くと・・・・
そこにはまぎれもない、昨夜チーズとミルクを美味しそうに食べていた、泥だらけの黒猫が横たわっていました。
お母さんは何かを叫びたくなりましたが、必死に口を押えました。作業員は心配そうにお母さんを見つめます。
「申し訳ありません奥さん・・・我々ももう出ないといけませんので・・・あの・・一応こういった無縁仏でも、供養できる場所もありますので・・・」
「・・・とっていいですか?」
「はい?」
「・・この子・・引き取っていいですか?」
作業員は少し考えた後、
「わかりました、恐らく車にはねられてかわいそうな最期だったけど、でも幸せに成仏はさせてやれそうですね。ではこちらはお預けします」
・・幸せに成仏。この言葉でお母さんの涙は止まらなくなってしまった。
15分くらい。お母さんはダンボールの中の猫を見つめていた。昨夜、逃してしまった事を心から悔いたり、美味しそうに食べていた姿を思い出したり、昨夜、うずくまっていた場所に埋めてあげよう・・・、またウチにご飯を貰いに来た時に多分はねられちゃったんだ・・・・
「あ、、あと1時間もしたら子供たちが帰ってくる・・・」
子供たちに、この猫の姿を見てもらうべきか、、それともお墓を先に作ってしまうか。お母さんには決心がつかなかった。でもとりあえず、この泥だらけの体を綺麗にしてあげようと思った。猫を桶に入れ替えて、お風呂場で泥を流してあげた・・
すると・・・
この子は本当は黒猫では無く、そこには綺麗な茶色の毛並みが揃っていた。
「・・・本当にゴメンね・・・」
そして、濡れた体をヘアドライヤーで乾かしてあげると、そこにはやせ細ってはいるが、今にも目を覚ましてご飯を催促しそうな、愛くるしい猫が横たわっている。
お母さんは初めて笑顔になった。心からこの猫が本当の姿を自分に見せてくれたように思えたから。
そこに、子供たちが元気よく帰って来た。「お母さ~ん!!猫きた~~?」
お母さんは覚悟を決めた。子供たちにも全てを見てもらおうと。
「うん・・・猫は来たのね・・・でも・・でも・・・」言葉が出ない・・・出せない・・・
この子たちに真実を伝えたら、どれだけ深く悲しむか。お母さんは少し時間をおいて、続けました。
「実は・・・猫ちゃん病気だったんだって。お薬も効かない病気でね・・もう生きられなかったんだって。でも最期に美味しいものを食べたいって言って、ウチにやってきたんだって。それで病気で苦しかったけど、最後に美味しいものを食べる事が出来て良かったって言いながら、永遠に眠って楽になる事にしたんだって。」
「でね・・・眠る前にお母さんにね、ここにお墓を作ってもらってもいいですか?って聞いて来たんだけど・・・・」
子供たちの目はみるみる赤くなり、大きな声で泣きはじめた。
お母さんもそれに耐えられなくなって、涙を流しながら、
「ね、どうする?お墓・・作ってあげる?」
子供たちは泣きながら・・・「うん・・・」
その後3人は、花屋さんで綺麗な花を買い、猫が眠る箱の中にそっと添えてやった。昨夜の泥だらけの体は想像もできないほどの、きれいな体になり、さらに手作りの花束に囲まれた猫は、最後に自分に光を与えてくれた最愛の家族のもとで、永遠に幸せに眠り続けた。
そして家族はその年に、市の保健所で殺処分寸前だった2匹の猫を引き取る事になった。2匹とも老猫であったが、引き取られた後は保健所に保護されていた時とは見違えるように元気になり、大学生となった子供たちに2匹とも看取られて、幸せな大往生を遂げた。
2015/06/30 0:29 修羅和泉
庭で何かが光ったのを、お母さんが見つけました。
それは近所では見た事の無い野良ネコの目が光ったものでした。お母さんが良く見ると、茂みに体半分は隠れていますが、黒猫のようでした。体はびしょびしょに濡れているようでした。
そして、とてもやせ細っており、もしかしてもう歩ける力が無い中で、お母さんの家の灯りに救いを求めてやってきたのかもしれません。
そう思ったお母さんは、冷蔵庫に走り、猫の好きそうな食べ物、そう、チーズとミルクを小皿に入れ、雨に濡れない庭先に置いてあげました。
「おいで、食べていいよ」
お母さんは、少しずつ後ずさりをしながら声をかけますが、びしょ濡れのやせ細った野良ネコは、小さい声で
「ニャー」
と、返事をするだけで、草むらからは出てきません。
お母さんは、そっとガラスドアのカーテンを閉めながら、とても悲しい気持ちになりました。
本当は、この土地は自然が豊かで、動物たちは恐れるものが殆ど無く暮らしていた。それが人間の開発によって森はなぎ倒され、自然は無くなり、道路が出来、現在は動物が簡単に命を奪われる場所ばかりです。
人間の開発によって住む場所を亡くしてしまった動物たち。そんな動物たちをできる限り助けてあげないといけない。お母さんは子供たちにそう教えました。
そして、そっとカーテンの隙間から野良猫の様子を見ると、小皿は空っぽになっていました。猫はと言うと・・・チーズとミルクが足りなかったのか、ドアの前でカーテン越しにこちらを見つめていました。
お母さんはこの猫がまだお腹を空かせていると思い、台所にまたチーズとミルクを取りに行きました。そして今度は野良猫に家の中で食べてもらいたいと思いました。家の中で温まって欲しい、そしてチャンスがあればびしょ濡れの体を拭いてあげたい。そう思っていました。
何日ぶりかにご飯を食べる事が出来た野良ネコは、今度はお母さんが呼ぶと恐る恐るですが、ドアの側まで入って来て、そこに置かれたチーズとミルクをまた美味しそうに食べています。
子供たちはお母さんに言われた通り、物陰からそっとその様子を見守っています。もしかしたら、家族が増えるかもしれないという希望を持ちながら。
そして野良猫はチーズとミルクのお代りを食べ終えました。お母さんはタオルを数枚そばに置きつつ、
「おいで、おいで」
と声をかけながら、野良猫との距離を縮めます。そして手が届きそうになるとお母さんはそっと手を差し出しました。
しかし、野良猫は驚いて外に逃げ出してしまいました。お母さんは残念そうな顔を子供たちに見せた後、庭先に目を向けました。
野良猫の姿は既になく、暗闇と雨の音だけが聞こえました。
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次の朝、雨もやみ、子供たちを送り出したお母さんは、ゴミを出しに行ったついでに、昨夜の野良猫がいないか近所を回ってみました。公園なら隠れているかもと思い、寄ってみましたがやはりどこにもいませんでした。
「まあお腹を空かせた猫だし、また夜に絶対に来てくれる。」
「あ、そうだ、今夜はお刺身を用意してあげちゃおうかな。」
お母さんも、新しい家族が増えるのを楽しみにしていたようです。
学校でも、子供たちが昨夜の出来事を自慢げに話していました。
友だちも猫に会いたくなってしまいました。子供たちは、今日ほど早く家に帰りたい日はありませんでした。もしかしたら家に昨夜の猫がいるかもしれないのですから。
お昼過ぎ、お母さんはいつもより楽しい買い物を終え、家に向かいました。買い物袋にはもちろん野良猫を歓迎するためのお刺身が入っていました。
そして、家に戻りましたが、何やら市のトラックが家の前に停車していました。お母さんは不振に思って作業服を着た年配の方に話しかけてみました。
「あっ、私どもは市の衛生局の者でして。実はお宅の前に動物の死がいあると近所の方が通報してくれたようでして、こうしてわれわれが処理をしに参りました。」
お母さんは奈落の底に叩き落とされたように不安になりましたが、まだあの猫と決まったわけではありません。そして、声を振り絞って聞いてみました。
「あの・・・・もしかして黒い猫ちゃんですか・・・?」
「え?あはい、そうです。もしかして・・・お宅の・・・?」
「あ、いえ・・・野良猫だったんですけど、あの・・昨夜・・・」
お母さんは勇気を出しました。
「あの、見せて頂いても・・?」
「それは大丈夫ですけど・・」「お願いします・・」
そして、作業員がダンボールを開くと・・・・
そこにはまぎれもない、昨夜チーズとミルクを美味しそうに食べていた、泥だらけの黒猫が横たわっていました。
お母さんは何かを叫びたくなりましたが、必死に口を押えました。作業員は心配そうにお母さんを見つめます。
「申し訳ありません奥さん・・・我々ももう出ないといけませんので・・・あの・・一応こういった無縁仏でも、供養できる場所もありますので・・・」
「・・・とっていいですか?」
「はい?」
「・・この子・・引き取っていいですか?」
作業員は少し考えた後、
「わかりました、恐らく車にはねられてかわいそうな最期だったけど、でも幸せに成仏はさせてやれそうですね。ではこちらはお預けします」
・・幸せに成仏。この言葉でお母さんの涙は止まらなくなってしまった。
15分くらい。お母さんはダンボールの中の猫を見つめていた。昨夜、逃してしまった事を心から悔いたり、美味しそうに食べていた姿を思い出したり、昨夜、うずくまっていた場所に埋めてあげよう・・・、またウチにご飯を貰いに来た時に多分はねられちゃったんだ・・・・
「あ、、あと1時間もしたら子供たちが帰ってくる・・・」
子供たちに、この猫の姿を見てもらうべきか、、それともお墓を先に作ってしまうか。お母さんには決心がつかなかった。でもとりあえず、この泥だらけの体を綺麗にしてあげようと思った。猫を桶に入れ替えて、お風呂場で泥を流してあげた・・
すると・・・
この子は本当は黒猫では無く、そこには綺麗な茶色の毛並みが揃っていた。
「・・・本当にゴメンね・・・」
そして、濡れた体をヘアドライヤーで乾かしてあげると、そこにはやせ細ってはいるが、今にも目を覚ましてご飯を催促しそうな、愛くるしい猫が横たわっている。
お母さんは初めて笑顔になった。心からこの猫が本当の姿を自分に見せてくれたように思えたから。
そこに、子供たちが元気よく帰って来た。「お母さ~ん!!猫きた~~?」
お母さんは覚悟を決めた。子供たちにも全てを見てもらおうと。
「うん・・・猫は来たのね・・・でも・・でも・・・」言葉が出ない・・・出せない・・・
この子たちに真実を伝えたら、どれだけ深く悲しむか。お母さんは少し時間をおいて、続けました。
「実は・・・猫ちゃん病気だったんだって。お薬も効かない病気でね・・もう生きられなかったんだって。でも最期に美味しいものを食べたいって言って、ウチにやってきたんだって。それで病気で苦しかったけど、最後に美味しいものを食べる事が出来て良かったって言いながら、永遠に眠って楽になる事にしたんだって。」
「でね・・・眠る前にお母さんにね、ここにお墓を作ってもらってもいいですか?って聞いて来たんだけど・・・・」
子供たちの目はみるみる赤くなり、大きな声で泣きはじめた。
お母さんもそれに耐えられなくなって、涙を流しながら、
「ね、どうする?お墓・・作ってあげる?」
子供たちは泣きながら・・・「うん・・・」
その後3人は、花屋さんで綺麗な花を買い、猫が眠る箱の中にそっと添えてやった。昨夜の泥だらけの体は想像もできないほどの、きれいな体になり、さらに手作りの花束に囲まれた猫は、最後に自分に光を与えてくれた最愛の家族のもとで、永遠に幸せに眠り続けた。
そして家族はその年に、市の保健所で殺処分寸前だった2匹の猫を引き取る事になった。2匹とも老猫であったが、引き取られた後は保健所に保護されていた時とは見違えるように元気になり、大学生となった子供たちに2匹とも看取られて、幸せな大往生を遂げた。
2015/06/30 0:29 修羅和泉
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コメント
1. 無題
いいご家庭にはいい子たちがくるにゃんよ。
自分をうつす鏡にゃ。そう思う。
2. 無題
また変な物を長々と読ませてしまったかにゃ^q^?
かくあほーによむあほー。おなじあほーなら飼わにゃ。
リアルは誰も死なないエンディングだったんです^q^みんな元気に楽しく過ごしてますよ^q^